AI関連発明について
AI(人工知能)を発明の構成要素に含む出願が、増加している。
最近の特許庁の統計(特許行政年次報告書2018年版P.152‐153より)によれば、2011-2013年までは年間わずか100件あまりであったが、2014年以降は右肩上がりに増加し、2016年には600件を越えるAI関連発明がわが国特許庁に出願されている。この傾向は、米国・中国・韓国・欧州についても同様である。
AI関連発明において、権利化可能な発明は、特に定義等がある訳ではないが、以下のような技術は概ね保護されると考えられる。
(1)学習モデルの生成手法、学習手法(パラメータの更新等)
(2)学習モデルの活用段階(学習結果から予測)
(3)学習モデルそのもの(ブラックボックスとならないもの)
(4)学習によって得られた成果物(※)
但し、(4)については、AIをツールとして活用して得られた成果物と、AIが自発的に発明した成果物とを区別すべきではないかといった議論がなされている。特許制度は、新規発明公開の代償として一定期間、独占排他権を付与することにより、産業の発達に寄与することを目的として存在する。独占排他権の付与は、発明公開のインセンティブと考えられている。AIが人間のツールとして発明する場合は、その使用者が発明者となることに異論はない。しかし、AIが能動的に発明活動を行うことになった場合に、その成果物に独占排他的権利が付与されるべきであるのか、議論されている。
一方、審査や先行技術文献調査といった特定の目的を達成するための技術については、すでにAI技術を活用した多くのツールが開発されている。今後、審査や先行技術調査はAIを利用したツールによって実施される場面が増加していくと思われる。