外国語書面出願及び外国語特許出願の翻訳文提出期限

我が国の特許実務において特許庁に明細書等の「翻訳文」を提出する場面は、特許法第36条の2に規定される「外国語書面出願」と、特許法第184条の4に規定される「外国語特許出願」の場合の2つが考えられる。

外国語書面出願の制度は、出願書類が英語で準備されているが日本語への翻訳が間に合わないときなどに活用できるであろう(ちなみに、外国語は「英語」に限られる。特許法施行規則25条の4参照。)。この英語翻訳文の提出期限は現行法上は原則として「その特許出願の日から1年2月以内」である(*1)。

外国語特許出願の場合、我が国は国内書面提出期間(国内移行期限)を優先日(最先の基礎出願日)から30月としているため、原則的には移行期限日までに翻訳文を提出しなければならないが、特例期間が設けられており、「国内書面提出日から2月以内」(これを「翻訳文提出特例期間」という。) に提出すればよい(*2)。

なお、「国内移行期限」から2か月ではなく、「国内移行書面の提出日」から2か月である点には注意が必要である。なぜなら、国内書面提出期限よりも前に国内書面を提出した場合には国内移行期限から2か月よりも早くに提出期限が到来することになるからである。期限を徒過してしまいこの規定の解釈を争った裁判例もあるが、認められなかったようである。ちなみに、小職の知る限り、我が国では期限を争った訴訟で原告が勝訴することは、天変地異や本人の重篤(代理人がいる場合は認められない)のような不可避の場合を除き、認められた例がないと思われる。

ただし、平成23年改正法により、翻訳文を提出期限までに提出できなかったことについて「正当な理由」がある場合には、一定の期間内に救済されるとの規定が新設されている(特許法第36条の2第4項、184条の4第4項)。 このような期限徒過についての救済規定が設けられることは出願人にとっては喜ばしいことである。


(追記)

平成 28 年 4 月 1 日施行の特許法改正により、外国語書面出願の翻訳文提出期限は「その特許出願の日から1年4月」に改正されている。
また、提出できる外国語書面についても省令改正により「英語その他の外国語」と変更された(特施規第 25 条の 4)。
すなわち現在は「英語」に限られず、あらゆる言語に拡大されていることを注記しておく。