インターネット・ショッピングと商標権侵害
総務省が発表した「情報通信白書」(平成23年度版)(*1)によると、インターネットショッピングの利用状況は平成14年から平成22年にかけてほぼ増加傾向で推移している。特に、近年は「金融取引」、「衣料・アクセサリー類」、「趣味関連品・雑貨」、「食料品」の伸びが大きいという。
これらは通常、インターネットショッピングのサービスを提供する業者のウエブサイト上に商品の販売を希望する業者が登録する形でなされる。では、インターネットサイト上の小売業者等のページに商標権侵害があった場合、インターネットショッピングの提供者は商標権侵害の法的責任を負うべきであろうか。少々古い事件ではあるが、日本の裁判所の判決例がある。昨年(2012年)2月、知財高裁第1部の中野裁判長は、
「合理的期間内に侵害内容のウェブページからの削除がなされない限り,上記期間経過後から商標権者はウェブページの運営者に対し,商標権侵害を理由に,出店者に対するのと同様の差止請求と損害賠償請求をすることができると解するのが相当である。・・・」
と判示した。その理由として、インターネット・ショッピングサイトの社会的有益性や侵害惹起の可能性が低い点を指摘すると共に、仮に抵触の可能性があるとしても正当権利者である可能性もあり、一律に商標権侵害の蓋然性が高いと認識すべきではないとする一方で、
「商標権を侵害する行為は商標法違反として刑罰法規にも触れる犯罪行為であり,ウェブページの運営者であっても,出店者による出品が第三者の商標権を侵害するものであることを具体的に認識,認容するに至ったときは,同法違反の幇助犯となる可能性がある」、また、
ウェブページ運営者は契約により利益を得ており、侵害行為を認識できたときはこれを回避する措置を執ることができる事情があるから、そのような場合には直ちに侵害行為の有無を調査すべきである、それらを履行する範囲で責任を負わない、などを理由として挙げた。
そして、本事案への当てはめとして、一審被告は、「商標権侵害の事実を知ったときから8日以内という合理的期間内にこれを是正した」
として、損害賠償請求を棄却した。
—–
*1)「情報通信白書」(平成23年度版) 総務省
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h23/html/nc213310.html
*2)知財高裁 平成22年(ネ)10076号 「チュッパチャプス事件」
https://www.ip.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/999/081999_point.pdf