特許情報を活用した事業性評価について
特許情報を経営に活用しようとする動きが活発化している。弊所では、日本及び各国の特許庁が公開した特許情報を元に事業活動に有益な情報を得ることを目的とした「事業性評価のためのマクロ調査(特許情報を利用した技術俯瞰調査)」などのサービスを提供している。最初のヒアリングから最終報告まで平均で1~2ヶ月、長いものではそれ以上かかることもあるため、それほど多くの数を処理できないが、今後さらに注力したい業務分野の一つである。
たとえば、ある事業分野に新規参入しようと考えている会社は、その事業分野での必須と考えられる「基本特許」の存在を把握する必要があるだけでなく、事業全体として、どのようなプレーヤー(競合他社)が存在し、各社の長所や短所を含めた傾向を把握したいと考えるであろう。このような場合、特許情報を利用したマクロ調査をお勧めしたい。事業分野や調査目的(何を知りたいのか)に応じてまとめ方は変わるが、概ね以下のような調査を行っている。
1.母集団の決定
弊所では、特許調査の基本は母集団を求めることからはじまるべきである、との考え方にたっている。母集団に含まれないものはどれだけサーチしても見つからないからである。それだけに、母集団の決定にはかなりの時間を割り当てている。ある特定の技術分野に関する技術動向の俯瞰調査である場合には、可能な限り調査の客観性を高めると共に恣意性を排除することが最も重要であるため、調査目的にふさわしい規模(件数)の母集団を確保することを重視している。
2.絞込み
適切な母集団が決まったらここに適切な検索式で絞込みをかけていくことで必要な情報が取り出せる。たとえば、母集団の全体時系列マップを描くことで出願件数の推移を見ることができるであろう。ある特定の技術に関してプレーヤー(競合会社)は何社くらいあるのか、上位の会社はどのくらいのシェアを占めるのか、だいたいいつごろからこの分野に参入しているのか、どのように推移しているのか、どのような技術に強く逆にどの部分は弱いのか、といった情報が得られる。
3.分析・検討(及び再調査)
これらのマップを一通り描いた後、得られたデータについてさらに詳しい検討を行って弊所としての「所見」をまとめ、報告書を作成する。また、一般的な調査会社の場合、特許権の強さや弱さといった情報は抽出された特許文献の読み込みを行わない「統計的処理」、すなわち、あくまで所定の基準で機械的にスコアリングして上位から並べる、という手法を用いることが一般的であると思われるが、弊所では、抽出した特許文献を基本的には全て読み込み、内容的な検討を加えている。極めて重要な特許が発見された場合、出願経過を調べ、引用文献まで検討する。パテントファミリーの有無、外国での権利化の状況やそこで通知された引用文献からみた無効性の判断も含めて、権利の強さ弱さの評価に小職らの弁理士としての知識と経験に基く「主観」を加えている点が大きく異なると思われる。
このような調査・分析はそれ自体がノウハウのかたまりのようなもので、その手法を含めてあまり公表されていないかもしれないが、やり方がわかることと実際にできることとの間には大きな差があると思う。