ブラジル特許法審査基準改訂について

ブラジル特許庁(BPO)は特許出願の出願審査請求後の手続補正に関する新しい審査基準を発表した、とのことである(下記注)。
ブラジル産業財産権法(*1)第32条には、出願審査請求前までは、当初明細書等の開示範囲内で「特許出願を一層明瞭又は明確にするため」の補正が認められることが記載されている。今般の審査基準で補正可能な範囲の判断基準が明らかとなった。

改訂審査基準によれば、出願審査請求日までは、出願当初の特許請求の範囲、明細書及び図面の範囲内で、特許請求の範囲に対する自発補正が認められる。誤訳訂正や誤記の修正を目的とする自発補正については当初明細書記載の範囲である限り出願審査請求後も認められる。出願審査請求後の自発補正が認められる例は、以下の通りである。

-従属請求項の発明特定事項を独立請求項に追加する補正
(-Inserting the context of a dependent claim into an independent one;)
-パラメーターの範囲の減縮補正
(-Restricting parameter range;)
-従属請求項中において選択的事項として記載していた要素の削除
(- Withdrawing an element originally presented as an alternative.)

※なお、改訂審査基準では出願審査請求後に独立請求項から発明特定事項を削除することは、保護範囲を拡大するものとして認められないとしている。
また、上記と同様の補正の制限は分割出願(※ 審査手続終了前であれば、出願を分割できる*1 )にも適用される。拒絶査定不服審判中に特許請求の範囲を拡大することを目的とする補正も、認められない。

ちなみに、ブラジルの特許制度は日本の特許制度と全般的に似ており、出願審査請求期間も36ヶ月(日本と同じ)である(*1)。但し、出願が却下されたあとでも「回復の請求」が認められている点は大きく異なる。我が国も特許法第48条の3に但書きを新設して、是非ともブラジル特許法第33条補項と同様の条文を追加する改正をしてもらいたい。

注 審査基準改訂についてはブラジルの特許事務所からのニュースレターを要約しつつ翻訳したものであり、ブラジル特許庁のウエブサイト(*2)で原文を確認しようとしたところポルトガル語しか見つけられず、上記の情報・解釈には多少の誤解がある可能性もあります。詳細が明らかになり次第、修正します。

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*1 ブラジル産業財産法(特許庁仮訳)
http://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/fips/pdf/brazil/sanzai.pdf
第26条
特許出願は,出願審査が終了するまでは,職権又は出願人の請求により2 以上の出願に分割することができる。ただし,分割出願が次に掲げる要件を満たしていることを条件とする。
(I) 原出願に明確に言及していること,及び
(II) 原出願に開示されている内容の範囲を超えていないこと
補項 本条の規定に従っていない分割請求は却下される。
第32 条
出願人は,特許出願を一層明瞭又は明確にするため,審査請求時まで,特許出願の補正をすることができる。ただし,補正は,出願書類によって最初に開示した内容を超えないことを条件とする。
第33 条
出願人又はその他の利害関係人は,出願日から36 月の期間内に特許出願の審査を請求しなければならない。請求をしなかったときは,その出願は却下される。
補項 特許出願は,出願が却下されてから60 日以内に出願人が回復の請求をし,特定の手数料を納付した場合は,回復させることができる。前記の手続をしなかった場合は,出願は,最終的に却下される。

*2 ブラジル連邦共和国 特許庁ウエブサイト
http://www.inpi.gov.br/portal/artigo/guia_basico_patentes