欧州共同体意匠出願
先日、弊所で初めて「欧州共同体意匠出願」を行った。開業間もない頃から準備を始めているのになかなか受任できる機会に恵まれなかったが、ようやくそのチャンスがめぐってきた。今年の4月8日に現地代理人に指示書面を送ったが何度か図面等について何度かやり取りがあったのち、5月20日に登録証が送られてきた。無審査だからだが、非常に早い。意匠に係る物品が国際分類の同一分類に属する場合には複数の意匠を1つの出願でできるため費用も安く、これでEU加盟国(27カ国)全てに最大25年間もの間、効力が及ぶのだから欧州での意匠出願は非常にコストパフォーマンスがよいといえる。もっとも、部分意匠制度はなく、提出できる図面又は写真の枚数に制限(オンラインでは7図まで)があるなど、日本の意匠実務とは異なる側面もある。
同時期に米国にも意匠特許出願をしたが、1ヶ月ほどたってようやく「出願受領通知(FILING RECEPT)を受領した。米国ではこれからようやく実体審査が始まる。
思うに意匠製度ほど各国の保護体系が異なるものはない。現在、我が国の意匠制度は改革の途にあるようであるが、「意匠」自体の概念が、我が国の場合、物品+外観(デザイン)という前提に立っていているため、物品にとらわれず広い権利範囲が認められる欧州共同体意匠制度との間には、大きな隔たりがあるように思う。部分意匠制度や関連意匠制度なども各国ごとに制度の有無、要件や効果が異なっている。どこまで国際調和ができるのか、今後の経過を注視したい。