PCT国内移行手続
多くの国では、PCT国際出願の国内移行期限は、優先日(最先の基礎出願日)より原則として30ヶ月とされている(PCT第22条、第39条)。しかし、いくつかの例外があり、20ヶ月や21ヶ月の国もあれば31ヶ月の国もある。さらに、英語以外の言語に翻訳が必要な国もあればそうでない国もある。委任状や譲渡証の書式も各国まちまちである。実際にやってみなければ、これらの感覚は掴みにくい。弊所の経験上、米国については、かなり早い段階で国内移行手続をすることが決まっているケースが多い。その一方で、例えば以下のような国は、移行期限の間際に依頼を受けるケースが多い。英語への翻訳がすでに完成している場合、弊所は以下のような優先順位で国内移行手続の依頼を行っている。
1.移行期限が30ヶ月であり、英語以外の言語に翻訳が必要な国
中国(中国語)*1、メキシコ(スペイン語)、ブラジル(ポルトガル語)、タイ(タイ語)等
2.移行期限が30ヶ月であり、英語で出願が可能な国
カナダ、フィリピン、マレーシア、ケニア、ナイジェリア等
3.移行期限が31ヶ月であり、英語以外の言語に翻訳が必要な国
ロシア(ロシア語)、ベトナム(ベトナム語)、インドネシア(インドネシア語*2)、韓国(韓国語)等
4.移行期限が31ヶ月であり、英語で出願が可能な国
欧州(EPO)、インド、オーストラリア、南アフリカ等
(追記)
中国の国内移行期限は延長費用を支払うことにより2ヶ月間の延長が認められます(*1)。なお、期限延長費は、約1,000RMB(1万5千円 /1RMB=15円の場合)とのことである。
*1 中国審査指南 (2010年2月1日施行) 特許庁仮訳
第百三条 国際出願の出願人は、特許協力条約第二条にいう優先権日(本章では”優先権日”と略す)より30ヶ月以内に、国務院特許行政部門で中国国内移行手続きをしなければならない。出願人が当該期限内に同手続を行わなかった場合、期限延長費を支払うことによって、優先権日より32ヵ月以内に中国国内移行手続きを行うことができる。
*2 インドネシアへの特許出願は、インドネシア語に加えて英語の翻訳文の提出も求められる。