CTM(欧州共同体商標)について

1.CTM(The Community Trade Mark)は、1件の登録手続によって欧州連合(European Union、以下、「EU」という。)加盟国全体をカバーすることができる商標権を指す。
現在のEU加盟国は、オーストリア、ベルギー、キプロス、チェコ、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、 アイルランド、イタリア、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルグ、マルタ、ポーランド、ポルトガル、スロバキア、スロベニア、スペイン、スウェーデン、オランダ、イギリス、ブルガリア、ルーマニアからなる計27ヵ国である。

スイスやノルウェーなどは加盟していないようである。手続きはスペインのアリカンテにある共同体商標・意匠庁(OHIM; The Office for Harmonization in the Internal Market)に行う。

2.CTMは、商標理事会規則(1993年12月20日のEC理事会規則第40/94号から改正を経て、現在、2009年2月26日のEC理事会規則第207/2009号とされている、単に、共同体商標規則:Community Trade Mark Regulation 、以下、「CTMR」という。)において定められている。
なお、日本国特許庁HPでは、CTMR(1993年12月20日のEC理事会規則第40/94号)の日本語訳を掲載している。
(掲載HP:https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/joyaku/oshukyodo/document/index/shouhyou_iinkai.pdf )

3.日本国民及び日本企業は、パリ条約加盟国の国民に該当するため、CTMの出願人適格を有する(Art.5(1)(b) CTMR)。 但し、日本から手続をする場合、OHIMに手続する代理権限をもつ資格者(現地代理人)が必要であり、その場合は日本の特許事務所を経由することが好ましい。

4.CTMの長所
・単独の出願でEU加盟国全てをカバーする商標権の取得が可能。更新手続も一度で済むため、商標管理が容易である。
・EU加盟国のいずれか1ヵ国で商標を使用していれば不使用取り消しを免れることができる。
・EU加盟国の多くの国で出願する場合、費用が通常の各国出願より安く済む。

5.CTMの短所
・一端拒絶になるとその効力がEU加盟国全部に及んでしまう。この場合に、拒絶がなかった国については通常の各国出願に切り換えることもできる。
・取り消し、無効についても権利は一体として扱われるので、EUの一カ国においてのみ取り消し、無効が確定した場合、他のEU諸国においても権利が消滅してしまう。また、国ごとには商標権は譲渡できない。
・相対的拒絶理由の審査がされずに、方式と絶対的拒絶理由の審査だけが行われて登録になる。従って、同一、類似の商標が数多く併存し、異議申し立てをうける危険がある。

6.費用
OHIMの手続費用は2009年5月に改正され、大幅に減額された。

出願時(3類まで) 900+150×(N-3) ユーロ (電子出願の場合)
但し、Nは区分数

登録時 0 (従前は850ユーロ+150×(N-3) ユーロ必要だったが無料になった。

更新時 1,350+400×(N-3)ユーロ

これに、現地代理人費用と国内代理人を経由する場合はその費用が必要となる。

当事務所では現状はCTMを取り扱った実績がないのが実状だが出願を前提とした問い合わせを過去何度か受けており、この種の外国商標出願事件は今後積極的に取り組みたい業務分野の一つである。

参考:パテント2009年Vol.62 No.11 「共同体商標と共同体意匠の世界」 松井宏紀著

1.CTM(The Community Trade Mark)は、1件の登録手続によって欧州連合(European Union、以下、「EU」という。)加盟国全体をカバーすることができる商標権を指す。
現在のEU加盟国は、オーストリア、ベルギー、キプロス、チェコ、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、 アイルランド、イタリア、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルグ、マルタ、ポーランド、ポルトガル、スロバキア、スロベニア、スペイン、スウェーデン、オランダ、イギリス、ブルガリア、ルーマニアからなる計27ヵ国である。

スイスやノルウェーなどは加盟していないようである。手続きはスペインのアリカンテにある共同体商標・意匠庁(OHIM; The Office for Harmonization in the Internal Market)に行う。

2.CTMは、商標理事会規則(1993年12月20日のEC理事会規則第40/94号から改正を経て、現在、2009年2月26日のEC理事会規則第207/2009号とされている、単に、共同体商標規則:Community Trade Mark Regulation 、以下、「CTMR」という。)において定められている。
なお、日本国特許庁HPでは、CTMR(1993年12月20日のEC理事会規則第40/94号)の日本語訳を掲載している。
(掲載HP:http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/shiryou/s_sonota/fips/mokuji.htm) ※リンク切れを修正(2021-2-26)

3.日本国民及び日本企業は、パリ条約加盟国の国民に該当するため、CTMの出願人適格を有する(Art.5(1)(b) CTMR)。 但し、日本から手続をする場合、OHIMに手続する代理権限をもつ資格者(現地代理人)が必要であり、その場合は日本の特許事務所を経由することが好ましい。

4.CTMの長所
・単独の出願でEU加盟国全てをカバーする商標権の取得が可能。更新手続も一度で済むため、商標管理が容易である。
・EU加盟国のいずれか1ヵ国で商標を使用していれば不使用取り消しを免れることができる。
・EU加盟国の多くの国で出願する場合、費用が通常の各国出願より安く済む。

5.CTMの短所
・一端拒絶になるとその効力がEU加盟国全部に及んでしまう。この場合に、拒絶がなかった国については通常の各国出願に切り換えることもできる。
・取り消し、無効についても権利は一体として扱われるので、EUの一カ国においてのみ取り消し、無効が確定した場合、他のEU諸国においても権利が消滅してしまう。また、国ごとには商標権は譲渡できない。
・相対的拒絶理由の審査がされずに、方式と絶対的拒絶理由の審査だけが行われて登録になる。従って、同一、類似の商標が数多く併存し、異議申し立てをうける危険がある。

6.費用
OHIMの手続費用は2009年5月に改正され、大幅に減額された。

出願時(3類まで) 900+150×(N-3) ユーロ (電子出願の場合)
但し、Nは区分数

登録時 0 (従前は850ユーロ+150×(N-3) ユーロ必要だったが無料になった。

更新時 1,350+400×(N-3)ユーロ

これに、現地代理人費用と国内代理人を経由する場合はその費用が必要となる。

当事務所では現状はCTMを取り扱った実績がないのが実状だが出願を前提とした問い合わせを過去何度か受けており、この種の外国商標出願事件は今後積極的に取り組みたい業務分野の一つである。

参考:パテント2009年Vol.62 No.11 「共同体商標と共同体意匠の世界」 松井宏紀著